時事語、話題語、ビジネス・暮らしのことば、日常語に対応する今アメリカなどで使われている英語がみつかります
2017年10月15日
ボランティアをしたいとか、忙しそうなので手を貸してあげたいという気持ちを相手にメールなどで伝えるときによく使われているのが、
I would like to help out in some way.
です。 これは「何かお手伝いしたいのですが」の英語表現ですが、「何か」のところは、英語でどういうのか、思いつかないかもしれません。英語では、「何らかの方法で」という言い方、つまりin some wayがよく使われています。人によっては、in some way or another.ということもあります。
さて、「手伝う」と言えば、すぐに思い浮かぶのはhelpでしょうが、ここではhelp outが使われています。なぜでしょうか。ともに「手伝う」「手を貸す」といういう意味です。が、しかしhelp outとhelpでは少しニュアンスが異なります。
「ある特定の状況で、相手に手を貸す」というのがhelp outです。困っている状態や、手を貸してほしい状態にある相手に対して、手助けして(help)して、困っている状態から抜け出させる(out)のがhelp outです。
したがってhelp outは「特定の問題に対して一時的に手伝う」というニュアンスがあります。
一方helpの方は、手伝う対象が何であれ、とにかく手を貸すときに使われます。どのような事を、どの程度お手伝いをするのかがわからない状況で言い方です。
二つの違いがよくわかる実際の例を紹介します。
“The nurses are programmed to help the new doctors, if one is struggling, they go up and say can I help you out?” (Joan S. Ash, et al., "A Cross-site Qualitative Study of Physician Order Entry," Journal of the American Medical Information Association, Marh-April 2003,;US National Library of Medicine, National Institutes of Health)
「看護師は新任医師を手助けするようにプログラムされています。もし医師が苦労しているなら、近寄って来て、お手伝いしましょうかといいます」
最初はhelpだけです。なぜかというと、とにかくどのようなことでも新人医師のお手伝いをするように意識付けされており、手助けする対象は限定されていないという意味だからです。
二番目のセンテンスの方は、新人医師が困っているという状況です。こうした状況に遭遇すると、看護師は、手を貸しましょうかと声をかける、と言っています。医師が直面している具体的な問題への手助けですから、help outが使われているのです。状況が解決されれば、helpの任務はout(終了)ということになります。
もう一つhelpだけの例を念のために挙げておきます。
He said in parting, "Let me know if I can help." He gave me his phone number to back it up. (Eliot Asinof, "Hey Joe," The Village Voice, New York 2/13/2001)
別れ際に「お手伝いできることがあれば言ってください」と彼は言った。その言葉を裏付けるため、彼の電話番号をくれた。
ここの「彼」は、helpする事柄を事前にはまったく想定できない状況にあります。「困ったことならなんでも連絡してください」、と伝えたいので、helpだけを使っているのです。
というわけで、 I would like to help out in some way.は、一時的に、少しお手伝いをしたいという時に使う言葉です。
もっとも、われわれはネイティブではないので、日常会話のなかでhelpとhelp outを明確に意識して区別しなくても、言いたいことはおおまかに伝わります。
(引野剛司・甲南女子大学教授 10/15/2017)
ここで紹介した表現は、おもに米国での複数の実用例に基づいています。その他の実用例や関連表現は実用・現代用語和英辞典(本体)(www.waeijisho.net)をご覧ください。