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「せみ時雨」って英訳できる?

2009年08月05日

このところ朝から「せみ時雨」がものすごい。大学が夏休みになって、仕事を自宅ですることが多くなり、昼間はアブラゼミ、クマゼミ、夕方になるとヒグラシの大合唱が聞こえてくる。「夏なのだ」とあらためて実感する。

蝉の鳴き声を「通り雨」にたとえる言い回しは、昔の日本人の自然を愛したこころが現れだろう。蝉時雨、朝顔、風鈴、うちわ、蚊取り線香、カキ氷。いずれも少しレトロだが、ぼくの日本の夏のイメージだ。なかでも「せみ時雨」は夏の暑さのイメージと直結している。

松尾芭蕉の「閑さや 岩に染み入る蝉の声」を誰もが知っているように、蝉は日本の夏の風物詩。「暑苦しさも感じる」という向きもいるが、われわれはせみに特段の愛着がある。

北米大陸でも夏になると蝉の大合唱があちこちで聞かれる。「アメリカ人にはフランス人や日本人のような蝉への思いはない」というのを『ニューヨークタイムス』の記事で読んだことがある。フランス人が蝉にどんな感情をもっているのは知らないが、アメリカ人にとっては蝉はnoisy(うるさい)な昆虫にすぎない。蝉の鳴き声は彼らにとってはnoise(騒音)なのだ。

An Irresistible Summer Soundtrack:buzz, hiss, rattle(有無を言わさぬ夏のサウンドトラック:ブンブン、シューシュー、がらがら)という見出しで、せみについての記事をやはり『ニューヨークタイムス』で読んだ。buzzは昆虫ならハチの羽音や人のざわめきを表現することば。hissはthe hiss of a snakeなどと使い、ぼくは聞いたことはないが蛇の怒ったとき立てる音とおおかたの辞書にはある。rattleは「ガラガラ、ゴロゴロ」だ。いずれも心地よい音を表わす言葉ではない。

「せみ時雨」は、直訳するとshower of cicadasだが、これではたぶん通じない。アメリカの新聞を読んでいて見つけた「せみ時雨」に相当する表現はいまのところ

the cicada buzz


the song of cicadas
のふたつ。

コオロギやキリギリスなどの虫の声にはa chorus of inset soundsなどと、chorus(コーラス)という言葉が使われるが、セミの鳴き声にはchorusはつけないようだ。

songという言葉が使われているので、プラスのイメージがセミの鳴き声にも付加されているのかなと思ったが、

the raspy song of cicadas
という表現にもであった。

raspyとは「耳障りな」「こするような」という意味だから、「耳障りなせみの声」となる。

さきのセミについての『ニューヨークタイムズ』の記事で、Cicadas generally do no harm to plants or people.(せみは一般的に植物にも人にも危害は与えない)とあった。無害な昆虫というのが、アメリカ人にとっての蝉なのだろう。
 


(ひきの・たけし)

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