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英語世間話、これ英語でどう言うの?

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「木枯らし1号」は、英語ではどう言えばいいのか

2019年11月15日

 

 日本の気象庁は、「季節が秋から冬へと変わる時期に初めて吹く、北よりの強い風」(気象庁「はれるんライブラリー」)を「木枯らし1号」と呼んでいます。

 

 「冬になったことを感じさせるような風」で、東京地方と近畿地方で冬型の気圧配置となり、毎秒8メートル以上の北よりの風が初めて吹いたときに、発表するのだそうです。

 

 これに相当する英語はあるのでしょうか。英語にはwintry wind (冬の風、冬特有の風) という言葉があります。たとえば、

 

 

  Wintry wind blows across a desolate landscape.

     ( Thomas 'Older By The Day' Parrott, Macon, Georgia, USA, Twitter 1/10/2019)

 荒涼とした風景に冬の風が吹いている。(荒涼とした風景に木枯らしが吹いている)

 

です。また、ロンドンに住んでいるCatherineと言う人が、松尾芭蕉のこがらしや頬腫れ痛む人の顔」の英訳を載せていましたが、「木枯らし」はcold wintry windと訳されていました。

 

 

The cold wintry wind.

The throbbing pains of the swelling cheek.

People’s face.

 

~ Matsuo Basho

(Catherine, London UK, Twitter 2/3/2019)

 

 

このwintry wind, cold wintry windが、日本でいう「木枯らし」の訳として定着しています。Wintryは「冬の」という意味です。

 

 

となると、「木枯らし1号」は、論理的にはfirst wintry wind of the year (この年の最初の冬の風) と訳せることになります。「気象庁は今日、東京地方で木枯らし1号が吹いた、と発表した」ならば、

 

 

The first wintry wind of the year blew in today to Tokyo and its vicinity, the Japan Meteorological Agency announced.

 

 

です。「吹く」はblowだけでもいいのですが、blow inとすることにより「吹き込む」というニュアンスを付加できます。

 

 

あるいは、「木枯らし1号」を「この季節の最初の冷たい風」として、

 

 

 

The first cold wind of the season blew in today to Tokyo, the Japan Meteorological Agency announced.

 

 

 

とも表現できます。これで、意味するところはきちんと伝わるはずです。

 

 

とはいうものの、アメリカの気象庁にあたるNational  Weather Serviceのホームページで"first wintry wind of the year” “first cold wind of the season”を検索してみましたが、ヒットしませんでした。イギリス、カナダ、オーストラリアの気象庁の公式サイトでもこれらの言葉を見つけることはできませんでした。

 

ただ、数はわずかですが、一般ではthe first cold wind of the seasonは使われていることが確認できました。

 

アメリカのテネシー州のジョンソン市のJohnson City Pressという地元新聞の記者が、高校フットボールについての2016年10月21日付けの記事で「この季節の最初の冷たい風が吹いた」と書いていました。

 

 

 

The first cold wind of the season whistled in to Kermit Tipton Stadium on Friday night, and with the first real chill of Autumn came a playoff-like atmosphere.

 (Dave Ongie,"Toppers boost playoff hopes with win over Bearden," High School Football, Johnson City Press, Tennessee  10/21/2016)

金曜日の夜、カーミット・ティプトンスタジアムにシーズンの最初の冷たい風(木枯らし1号)がヒューヒューと吹き込み、秋の最初の寒さでプレーオフのような雰囲気が生まれました。

 

 

 

もう一つ。ジョイス・フィフラ―(Joyce Hifler)という著者の,『A Cherokee Feast of Days』(1992)という本にもthe first cold wind blew inを見つけました。

 

 

 

 It seems only yesterday when the first cold wind blew in and laid flat the wild rose and turned the canes gray.

  (Joyce Hifler,A Cherokee Feast of Days: Daily Meditation,Council Oak Books, 1992)

 最初の冷たい風が吹き、野生のバラをなぎ倒し、茎が灰色になったのはつい昨日のようだ。

 

これと全く同じ文がフェイスブックの「ネイティブアメリカンの精神性と思考(Native American Spirituality and Thoughts)」というサイトにもありました。

 

 

 

ということは、欧米の英語圏の気象用語には「木枯らし1号」という概念が、そもそもないのではと推測できます。日本の気象庁が「木枯らし1号」を発表するのは、日本人の繊細な季節の変化への関心に応えているのでしょう。

 

 

 

(引野剛司・甲南女子大学名誉教授 11/13/2019)

 

 

  ここで紹介した表現は、複数の実用例に基づいています。その他の実用例や関連表現は実用・現代用語和英辞典(本体)(www.waeijisho.net)をご覧ください。

 

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