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英語世間話、これ英語でどう言うの?

エッセイ一覧

「ここだけの話」 This is just between you and me.

2009年08月07日

北朝鮮に拘束されていた米国人女性記者2人をクリントン元米大統領がピョンヤンから連れ戻した。表面的にはわずか20時間のじつに見事な離れ業だ。

こういう「見事に物事をやってのけること」を英語でcoupという。『ニューヨーク・タイムズ』に載ったクリントンの偉業を報じるAP電にHis landmark visit to Pyongyang to free the Americans was a coup. (二人のアメリカ人を解放するための彼の歴史に残るピョンヤンへの訪問は、見事なものだった) とあった。

それはともかく、このニュースを読んでいた頭に浮かんだのが、

This is just between you and me.

というフレーズ。こう前置きして アメリカ人は二人だけの内緒話を始める。

Just between you and me.
と簡略に言うときもある。日々の仕事や生活でよく使われる。

「ここだけの話」というのは、国家間の外交でもごくごくあたりまえで、それが世間には「外交機密」(diplomatic secrets)として、外交当局の機密文書として封印される。

クリントン元大統領はあくまでもプライベートで人道目的だけのために北朝鮮に飛んだ。だから、「ここだけの話」をpersonally(個人的)に金正日総書記とできないことはない。

ホワイトハウスも、クリントン元大統領の動きは米国政府とは関係のことですよ、という点を4日のギブス大統領報道官の声明として強調した。拘束された二人の米国人を取り戻すためにクリントン元大統領がどんな話をしたとしても米国政府は関係ありませんよという立場をクリアーにしたものだと読める。

このホワイトハウス声明文はごく短く、わずか34語。余計なことはいっさい言わないようにしている。

“While this solely private mission to secure the release of two Americans is on the ground, we will have no comment. We do not want to jeopardize the success of former President Clinton's mission."
「二人のアメリカ人を確実に解放するためのきわめて個人的な任務が現場で行われていますが、コメントをすることはありません。われわれは、クリントン元大統領の任務の成功を危うくするようなことはいたしません」

だから、二人の解放後の米国と北朝鮮の発表が食い違っているのも、当然で、それぞれに本当のことがすべて明らかにされているとは限らないし、真実以外のことが含まれていることも考えられる。この種の会談の発表ではおおいにありうることだ。

解決策を仕掛けたのは北朝鮮側のようだ。クリントン元大統領が来てくれればという打診がまず北朝鮮からあったとされている。ニューヨークの北朝鮮の国連代表部 (『ニューヨークタイムス』はこれをNew York connectionと書いている) と米国当局が水面下で交渉して、クリントン訪朝が実現したと報道されている。

北朝鮮から比較的信頼されているこの元大統領は、オバマ政権の外交責任者であるヒラリー・クリントン国務長官の夫。訪朝前に夫婦のあいだで、Just between you and me.の話しをしなかったなどまずあり得ない。

今回の米記者解放は、米朝双方がwin-win solution(双方が得をする解決策)を作り上げるために、公と私をうまく使い分けて演じた外交劇を見ているようだった。
 


(ひきの・たけし)

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